夜中のミルク作りは、少しでも手間を減らしたいもの。「ウォーターサーバーがあれば、すぐにお湯が出て楽になるのでは」と考える人も多いと思います。
ただ、粉ミルクの作り方には守りたい手順があり、ウォーターサーバーの温水がいつもその条件に合っているとは限りません。この記事では、公的機関・粉ミルクメーカー・ウォーターサーバー各社が公開している案内をもとに、ミルク作りにサーバーを使うなら何を確認すればいいかを整理します。特定のサーバーをおすすめする記事ではありません。
粉ミルクの調乳で、まず確認したいこと
粉ミルクの作り方の基本になっているのが、WHO(世界保健機関)とFAO(国連食糧農業機関)が2007年にまとめた「乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドライン」です。厚生労働省が仮訳を公開していて、日本でもこの年から70℃以上のお湯で調乳することが案内されるようになりました。
70℃以上とされている理由は、粉ミルクが無菌ではないためです。横浜市衛生研究所の解説によると、製造の過程でごくわずかに混ざったり、開封後に入り込んだりした菌(サカザキ菌やサルモネラ菌)を、お湯の熱で殺菌する目的があります。
ガイドライン(家庭向けの手順)の流れは、次のとおりです。
- 安全な水を沸騰させる(電気ポットなら、スイッチが切れるまで待つ)
- 70℃以上を保ったお湯で粉ミルクを溶かす(そのために、沸騰させてから30分以上は置かない)
- 流水や、冷水・氷水を入れた容器で、飲ませられる温度まで短時間で冷ます
- 作ってから2時間以内に飲まなかった分は捨てる
ここでいちばん大事なのは、粉ミルクを溶かすときのお湯が70℃以上であることです。ウォーターサーバーを使う場合も、この点が確認の中心になります。
粉ミルクに使う水は、何を選べばいい?
粉ミルクメーカーは、どんな水で作ることを前提にしているのでしょうか。
明治は、自社の粉ミルクについて「国内の水道水で溶いた時に母乳にできるだけ近くなるように」つくっていると説明しています。そのうえで、水道水が問題なく使えるなら水道水を使ってほしいとしています。
水道水が使えない場合は、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルが少ない市販の水を選ぶよう案内しています。目安として挙げているのは硬度120以下(できれば60以下)です。
森永乳業も、日本の水道水はミルク作りに使えるとしたうえで、ミネラルの多い硬水は赤ちゃんの腎臓に負担をかけるおそれがあるため、市販の水を使うなら軟水か、調乳用の純水を選ぶよう案内しています。
つまり、粉ミルクはミネラルの少ない水で作ることを前提に設計されているということです。ウォーターサーバーの水を使う場合も、硬度がどのくらいかは確認しておきたいところです。硬度はボトルのラベルや公式サイトに書かれていることが多いです。水の種類ごとの違いは、天然水とRO水の違いを整理した記事でも紹介しています。
「沸騰させるか」は、誰の案内を見る?
ここが、調べてみていちばん意外だったところです。「水を沸騰させるかどうか」の書き方が、資料によって違います。
| 水の沸騰について | お湯の温度について | |
|---|---|---|
| 厚生労働省(WHO/FAOガイドラインの仮訳) | 安全な水を沸騰させる。ボトル入りの水も無菌ではないので使用前に沸騰する | 70℃以上のお湯で溶かす |
| 明治 | 水道水が使えない場合、市販の水も一度沸騰させてから使う | ― |
| 森永乳業 | 飲料水を沸騰させる | 70℃以上のお湯で溶かす |
| アクアクララ | 自社の水は煮沸の必要なく、温水をそのまま使える | ― |
| プレミアムウォーター・Locca | 記載なし(必ず温水を使い、ミルクの注意事項を確認) | ― |
| クリクラ | 記載なし | 70℃以上のお湯が適している |
※2026年9月時点の各公式サイトの案内をもとに整理しています。「―」「記載なし」は、確認したページに記載が見当たらなかったものです。
厚生労働省が公開しているガイドラインの仮訳には、「ボトル入りの水も無菌ではないので、使用前に沸騰しなければならない」と書かれています。明治も、市販の水を使うときは「一度沸騰させてから」使うよう案内しています。
一方で、ウォーターサーバー会社の案内はさまざまです。
- アクアクララは、自社の水について「煮沸の必要もなく温水をそのまま調乳にご使用いただけます」と案内しています
- プレミアムウォーターとLoccaは、ミルク作りに使えるとしたうえで「必ず温水を使うこと」「ミルクの注意事項を確認すること」を案内していますが、沸騰させるかどうかには触れていません
- クリクラは、ミルク作りには70℃以上のお湯が適していると説明しています
この記事では、どちらが正しいかは決めません。ガイドラインは世界共通の考え方として書かれたもので、各社の案内は自社の水と機種を前提にしたものです。書いている立場と前提が違います。
そのうえで、実際に確認するときは、いま使っている粉ミルクのパッケージやメーカーの案内を基準にするのがいちばん確実です。調乳の方法は、粉ミルクごとに書かれています。迷ったときは、粉ミルクのメーカーに問い合わせてみてください。
ウォーターサーバーを使うなら、温水について4つ確認
ウォーターサーバーの温水は、いつでも70℃以上とは限りません。プレミアムウォーターの公式FAQを例に、確認しておきたい4つのポイントを見ていきます。
1. 温水は何℃か。 プレミアムウォーターの機種では、温水の設定は約80〜87℃が中心です。ただ、同じ会社の中にも、約60℃の「白湯モード」がある機種があります。ミルク作りにどのモードを使うかは、取扱説明書で確認しておきましょう。
2. エコモード・省エネモードで温度が変わらないか。 省エネ機能を使うと温水が約68℃になる機種もあります。また、部屋が暗くなると温水の加熱を止めるエコモードでは、暗い間や明るくなった直後のお湯は「適温ではない」と案内されています。夜間に温水を使う場合は、エコモードの動作を確認しておきたいところです。
3. 続けて出すと温度が下がらないか。 サーバーは内部のタンクで水を温めているため、続けてたくさん出すと加熱が間に合わず、温度が下がっていきます。一度に何本分も作るときは注意が必要です。
4. 再加熱の機能があるか。 機種によっては、ボタンを押すと約90℃まで温め直せる機能があります。温度が心配なときの助けになります。
温度が気になる場合は、一度、料理用の温度計などで実際に測ってみると安心です。
自分のミルク作りに合うか考える
ここまでを踏まえて、ウォーターサーバーが自分のミルク作りに合うかを考えてみます。
サーバーが助けになりやすいのは、こんな場合です。
- 毎回ケトルでお湯を沸かすのが負担になっている
- 使う機種の温水が70℃以上あることを確認できている
- エコモードや省エネモードの動き方を把握して、必要なら切り替えられる
- 使っている粉ミルクの調乳方法を確認したうえで使える
逆に、次のような場合は、今の方法のままでも十分かもしれません。
- 電気ケトルや電気ポットでのお湯作りに困っていない
- 温水の温度を確かめたり、モードを切り替えたりするのが負担に感じる
また、サーバーを長く使うなら、お手入れも大事です。お手入れの考え方は衛生面を整理した記事にまとめています。子育て中の暮らし全体でサーバーが必要かどうかは、6つの生活シーンでチェックする記事で考えられます。
まとめ:「サーバーだから作れる」ではなく、温度と調乳方法が合っているかを見る
- 粉ミルクは、70℃以上のお湯で溶かすのが基本です(WHO/FAOガイドライン、厚生労働省の仮訳)
- 粉ミルクメーカーは水道水を前提に設計していて、市販の水を使うならミネラルの少ない水を案内しています
- 「沸騰させるかどうか」は資料によって書き方が違います。使っている粉ミルクの案内を基準に確認しましょう
- ウォーターサーバーを使うなら、温水の温度・エコモード・連続して出したとき・再加熱機能の4つを確認します
ウォーターサーバーにするか迷っているなら、水道水のままでいいかを考えた記事から考えてみるのもおすすめです。


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